広報とよた2023年11月号 特集 子どもの声を聴こう。
児童虐待、いじめ、不登校、受験競争、ひきこもり...。
現代社会を生きる子どもたちの多くは、様々な課題を抱えています。
そのような中、今年の4月には「こども家庭庁」が発足され、子どもに関する政策の基本的な考えを示す「こども基本法」も定められました。
今、これまで以上に子どもの意見に耳を傾け、尊重しようとする動きが社会にあります。
そして、この11月には豊田市で「子どもの権利条約フォーラム2023inとよた」が開催されます。
私たちは子どもの声を聴けているのか。この機に考えてみましょう。
子どもの権利とは
さて、例えばこんな場面、あなたならどうしますか?
子どもが別の子のおもちゃを取ろうとしている
→
(A)子どもを抱き上げて別の場所に行く
(B)とにかくまずは子どもに声をかける
帰宅後、子どもが宿題に手を付けず遊ぼうとしている
→
(A)遊ぶ前に宿題をするように促す
(B)いつ宿題をするつもりか予定を聞く
つい(A)の行動をとりがちですが、実は(B)の方が、子どもの声、気持ちを尊重している点で、「子どもの権利」に配慮した行動と言えます。子どもの権利とはどのようなものか、改めて確認してみましょう。
子どもの権利と国際条約
全ての人は、生まれながらに「基本的人権」を持っています。
しかし、身も心も幼い子どもたちが、大人たちに振り回されることなく幸せに生きるためには、それだけで十分とは言えません。そこで作られたのが「子どもの権利条約」。
今では、日本を含む196の国と地域がこの条約を守ることを約束しています。
条約に記された権利の数々
条約には、子どもの具体的な権利として多くの権利が記されています。例えば「病気やけがをしたら治療を受けられる権利」や「教育を受ける権利」。日本と違って、世界にはこの権利さえ守られていない国がたくさんあります。
これはどうでしょう?
「遊んだり休んだりする権利」。
塾や習い事など、忙しい日々を送る現代の子どもたち。でも、好きなことや興味のあることがあれば、それもちゃんと尊重されるべきものです。
「自分の秘密を守る権利」。
子どもであっても、秘密にしたいことは秘密にする権利があります。相手が友達や恋人、保護者であってもです。
「あらゆる形の暴力や暴言から守られる権利」。
暴力は言うまでもなく、暴言もいけません。暴言には、例えば「お兄ちゃんはできたのに、どうしてできないの」といった、子どもの自尊心を傷つけるような言葉が該当します。
子どもの権利は、世界の貧しい国や特別な境遇にある子どもだけの話ではなく、日本のどの家庭の子どもにも関係する話なのです。ちゃんと守られているでしょうか?
豊田市では
悩める豊田市の子どもたち
では、豊田市の子どもたちはどのような状況にあるのでしょうか。
少子化が進む一方で、不安や問題を抱える子どもが増えていることが、次のデータからうかがえます。
子ども(18歳未満)の人口割合
とよた子どもの権利相談室(こことよ)(注釈)に寄せられた相談件数
(注釈)こことよでは専門的な知見をもつ「子どもの権利擁護委員」が各種相談に応じています
いじめの認知件数
児童虐待の認知件数
こんなデータも【話を聞いてもらえているという実感と肯定的思考の関係性】
一般的に、自分の話を聞いてもらえているという実感のある子どもほど、「認められている」「大切にされている」と感じられ、自己肯定感が上がるとされています。市内の小・中学生を対象とした調査(平成31年)では、「親・先生に話を聞いてもらえているかどうか」という設問と「普段の生活上で感じる肯定的・否定的思考」を問う設問の結果で、まさにその傾向が示されています。自己肯定感が高い子どもは、多少の困難があっても前向きに取り組むことができると言われています。
「子どもの権利擁護委員」に聞く、子どもたちの今
大人たちに求められる、寄り添う姿勢
こことよでは、子どもから大人まで様々な人から相談を受け、どうすれば良くなるかを一緒に考えます。相談以外にも、小・中学校の教室を訪れ、子どもの権利を正しく知ってもらう活動をしています。条文をかみ砕いて説明すれば、子どもたちは権利を身近なこととして理解し、相談してみようと思うのです。相談件数が増えているのは、これが1つの要因だと思います。一方で、多くの大人たちが、多忙で余裕がなくなっていることも要因の1つだと思います。とりわけ物価の高騰などで、経済的に厳しい家庭が市内でも増えていると感じます。もっと働かなくてはと、家庭で子どもと触れ合う時間がなくなっているのではないでしょうか。また、学校の先生たちも、とにかく忙しい。話を聞くと、本当に精一杯やられているなと感じますが、その中でどれくらい子どもに向き合えるものだろうかとも思います。
寄せられる相談の多くは、友人関係の悩みです。学校でけんかをして家に帰り、無視されたらどうしようと不安になる。でも親には心配かけたくないし、大事にしたくない。そうしてここへ相談してくれるのです。一つ、こんな事例がありました。いじめに関する高校生からの相談です。まず保護者から電話が入り、加害者に謝らせてほしいとのこと。でも、お子さんに電話を代わってもらい話を聞くと、謝ってほしいわけではなくて、仲直りして、いつも通りの友達に戻りたい、というのがその子の願いでした。そこで、相手の子とどのような関係になりたいか、そのためにどんな行動ができるか、子ども自身と話し合いを重ね、結果、自分から相手の子のもとへ話しに行くことにしました。そして、本人の望む関係性に戻りました。
とにかく会話する時間をつくり、子どもの声を聴くこと。子どもの言葉を表面的に捉えて大人の答えを言い付けるのでなく、その背後にある気持ちを聞き出すこと。そして、子どもにとって一番良いことはなんだろうと、子どもの最善の利益を考えること。難しいことではありますが、これらが大切なんだと思います。
(こことよ 子どもの権利養護委員 石井 拓児 さん(名古屋大学教授))
豊田市の取組
子ども条例
子どもの権利条約の理念に基づき、平成19年に県内初の子ども条例である「豊田市子ども条例」を制定しました。この条例により、子どもの権利の救済と回復を図るための「子どもの権利擁護委員制度」を制定し、子どもにやさしいまちづくりについて子どもの意見を聴くために「豊田市子ども会議」を設置しました。
子ども会議
平成20年度の設置から、今年度で15年目を迎えます。小学5年生から高校3年生までの子ども委員が、まちづくりに関する様々なテーマについて体験活動や話し合いを行っています。今年度は、「子どもの権利条約フォーラム2023inとよた」への出展も予定しています。
こどもまんなか
6月に豊田市は、こども家庭庁が推進する「こどもまんなか社会」の趣旨に共感・賛同し、「こどもまんなか応援サポーター」として各種取組を進めることを宣言しました。
家庭で 地域で
子どもの権利と子育てのQ&A
子どもの権利を尊重すること。その大切さは分かっていても、忙しい日々の中では、子どもの意見や希望を聞き入れるのが難しい場面も…。
子育てにまつわる疑問に、子育て総合支援センターと青少年相談センターがお答えします。
Q.子どもの意見を聴くことは、甘やかすことにならない?
A.まずは思いを受け止めてその上で折り合いを
子どもの意見を尊重することは、子どもの言いなりになることではなく、同じ一人の人間として尊重するということです。もちろん、無責任に甘やかすのはよくないですが、まずは、甘えも含めて、子どもの思いをきちんと受け止めましょう。
(子育て総合支援センター あいあい職員)
Q.どこまでがしつけ?叱り方が分かりません
A.子ども目線の、客観的な判断であれば大丈夫
時にはきつく叱ることもありますよね。虐待としつけの線引きは難しいものですが、「到底できない理不尽な課題を与える」のは虐待といえます。感情任せでなく、子どもの目線に立ち客観的に判断できていれば大丈夫です。子どもの意欲をいかに引き出せるかがポイントです。
(子育て総合支援センター あいあい職員)
Q.子どもに「学校に行きたくない」と言われたらどうすれば?
A.まずは子どものつらい気持ちをじっくり聴いてみて
子どもは友達との関係や授業など、様々なことと向き合う中で、時として苦しさや悩みを抱えているのかもしれません。時間をとって子どもの話に耳を傾けてみてください。聴いてもらうことで子どもはほっとできます。保護者も、心配なことがあれば、ちょっとしたことでも早めに相談窓口へご相談ください。
(青少年相談センター パルクとよた スクールソーシャルワーカー)
相談窓口
(備考)子どもも大人も、お気軽にご相談いただけます
“子どもに関する相談ならここ!”
とよた子どもの権利相談室 こことよ
電話番号:0120-797-931
“子どもの発達に悩んでいるなら…”
こども発達センター
電話番号:0565-32-8981
“友人トラブル、学校への行き渋りで悩んでいるなら…”
青少年相談センター パルクとよた
電話番号:0565-33-9955
主な相談:不登校、非行、友人関係など
“匿名でとにかく気持ちを聞いてほしい”
はあとラインとよた
電話番号:0565-31-7867
“子育てを負担に感じ始めたら…”
家庭児童相談室
電話番号:0565-35-1152
主な相談:子育ての悩み、養育環境、虐待など
健やかな育みを地域で
子どもの声に耳を傾けることは、子育て家庭にのみ求められるものではありません。
地域には、子どもや親が孤立せず、ありのままでいられるように活動している人たちがいます。「子どもの権利条約フォーラム2023 in とよた」の実行委員でもある市民団体「フリースペースK」の釘宮さんにお話を伺いました。
緩やかな関係性でつながる「第3の大人」
人は本来いろんな面を持っていますから、母親が常に「ママでいなければ」と縛られるのは辛いものです。ここフリースペースKには、専門家はいないけれど話せる場があります。先輩たちから「うちもそうだった」などと聞くと、肩の力が抜けまた日々を送れるのだと思います。
そしてそれは、子どもにとってもそう。親や先生ではない第3の場所や大人の存在が子どもには必要だと思います。私の話ですが、4年ほど前から、下校する小学生の見守りボランティアを始めました。きっかけは身近で起きた、とある子どもの不幸でした。長くこういう活動をしているのに、その子とは巡り合わず、とてもショックで…。私にできることは何だろうと考えている中で、見守りボランティアの募集を発見。最初のうちはこちらからの挨拶だけでしたが、続けるうちに子どもの方から「今日こんなことがね」とか「学校行きたくないんだよね」と話しかけてくれるように。そうすると私は「あ、そうよねー」って。それくらいのやり取りですが、そういう距離感にある大人が、家庭や学校の他に近くにいるとよいと思います。いろんな大人と接することで、多様な価値観が身に付きますし、何でもない人にこそ話しやすいこともあると思います。親や先生ほど関係性が強すぎず、緩やかにつながっている「第3の大人」。そんな存在になれたらと思っています。
釘宮 順子 さん フリースペースK代表
昭和61年に子育て中の母親たちとフリースペースKを発足。長屋を拠点に、毎月「あつまれ!ちびっこかいじゅう!」や「気軽に子育てトーク会」など様々な活動を展開。親子のほか幅広い世代の人が思いのまま時間を過ごす場になっている。
子どもの権利について一緒に考えてみませんか
子どもの権利条約フォーラム2023 in とよた
11月25日(土曜日)、26日(日曜日)に名鉄豊田市駅周辺にて開催!
子どもとの関係性は人によって様々ですが、それぞれの立場での向き合い方がきっとあるはず。子どもたちが伸び伸びと暮らせる社会を、皆で考えていきましょう。
子どもの権利に関する問合せ
こども・若者政策課(電話番号:0565-34-6630、ファクス番号:0565-34-6938、Eメール:kowaka@city.toyota.aichi.jp)
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こども・若者部 こども・若者政策課
業務内容:子ども・若者に関する政策立案、子ども・若者の自立・育成支援、放課後児童クラブに関すること
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