広報とよた2024年12月号 特集 もしも、地震が起こったら。
今年の初め、最大震度7を記録し、大きな被害をもたらした能登半島地震。
そして、初めて南海トラフ地震臨時情報が出された8月の日向灘の地震…。
「いつか来る」と思っている南海トラフ地震は、いつ起こってもおかしくありません。
「その時」、自分はどう行動するのか。またその時のために、どのような準備をしておくのか。
「今」考えておかないと!です。
巨大地震発生!その時、身の回りで起こること
例えば、特に危険な場所の1つとされるキッチン。 もし、震度6もの大きな地震が起こった場合、室内ではどのようなことが起こるでしょうか。
冷蔵庫や食器棚などが倒れ、中身が散乱
立つのもままならない中、倒れてきた家具・家電を避けるのはまず困難です。数百キログラムある大型家具の衝撃の威力は数トンに及ぶことも。電子レンジなども、ただ落下するのでなく、読んで字のごとく「飛んで」きます。実際に近年の地震では、負傷原因の約半数が家具類の転倒などだったとされています。
飛んでくるガラス片、刃物
破損した窓ガラスや照明のガラス片、食器類、刃物類が飛び散ることが考えられます。直接刺さってけがをするほか、床一面に散らばったガラス片によって身動きが取れなくなる恐れもあります。
塞がれる避難経路、開かないドア
倒れた家具類やガラス片が避難経路を塞ぐことも。ちょっとした障害でも、刻一刻と変わる状況下では逃げ遅れの原因になりかねません。また、揺れにより発生した住宅の歪みや傾きで、ドアの開閉ができなくなることもあります。
その他、キッチン以外にも…
特に寝室は、1日のうち多くの時間を、無防備な状態で過ごす場所。家具転倒によるリスクが非常に高い場所です。
まず優先すべきは、身を守るための行動!
「その時」、地震を前に呆然とするのではなく、自分の身を守ることを第一に考えて行動しましょう。最も重要なのは「頭を守ること」です。
身を守る3つの基本
「机の下に隠れる」場合、机の脚をつかんで体と机を固定するのがポイントです。
近くに机がない場合は、腕や荷物を使って頭を守りつつ、なるべく落下・転倒する物のない安全な場所(壁際など)に移り、しゃがんで身を固定します。
内か外、どちらが安全か
屋内や周囲の状況にもよるため一概には言えませんが、建物の耐震性が低い場合は、倒壊した建物の下敷きになる危険性を避けるため、地震の揺れが収まったか弱いうちに慌てず屋外に避難することを考えます。逆に耐震性の高い建物であれば、落下物の多い屋外に避難するよりは、屋内に留まる方が安全な場合があります。この場合、玄関の 扉を開けて、すぐに出られる状態で待機すると良いでしょう。
その他にも起こる こんなこと、あんなこと
傷ついた配線による電気火災
大規模な火災が発生した能登半島地震。 火災の理由は、火気器具の使用による燃え移りではなく、地震で傷ついた電気配線のショート・接触不良による電気火災だったと考えられています。電気火災は、停電してしばらく経った後の通電再開時にも起こる可能性があります。
→ 避難時はブレーカーを落とす!
ライフライン、インフラの機能不全
南海トラフ地震が起こると、市内では震度5~6の揺れが発生すると予測されています。震度5以上の場合、断水、停電、交通遮断の可能性があるとされます。また、通信障害により携帯電話やスマホが使えない事態も想定されます。避難所の場所が分からない、家族や大切な人と連絡がつかないといったことになるかもしれません。
→備蓄の準備、有事の決め事の共有 伝言ダイヤルの活用
地震を引き金に発生する土砂災害
起伏のある地形に地震の強い揺れが加わると、がけ崩れ、土石流、地すべりが発生することがあります。さらに、地震で不安定になった斜面が、雨や雪解け水によって崩壊し、被害が拡大することもあります。
→ 危険な場所を把握しておき、近づかない!
その他
電子マネーやATMが使用できない避難所などでの犯罪被害…など
だから必要!日頃の備え
巨大地震が発生すると起こる様々な事態…。そのために「今」、どのような備えをしておくべきでしょうか。
01 住まいの環境を整える
【家具の固定】
状況に応じて、適切な固定器具を利用しましょう。
家具の倒れ方と転倒防止のポイント
地震時は下図のように、接地面の手前側を支点として正面に倒れてきます。 そこで家具の固定には、浮き上がろうとする背面側を抑えることが有効です。例えば突っ張り棒であれば、必ず背面側に設置します。その他、突っ張り棒の脚の向きを壁と垂直にすることや、頑丈な天井を選ぶこともポイントです。
また、棚の収納を見直すのも有効な対策です。重いものは下、軽いものは上の段に整理して、重心をなるべく下げることで転倒しにくくなります。
【家電や窓ガラスなどの転倒・飛散防止】
電子レンジやテレビなど重量がある物は、地震の揺れで飛ばないよう、粘着マットや転倒防止ベルトを利用して対策します。また、割れてけがや避難の障害になりうる窓ガラスには、飛散防止フィルムを貼るなどの対策が有効です。
【安全な場所・避難経路の確保】
頭を守る安全な場所、屋外へ避難するときの経路、そのための家具の配置や向きなどを整えておきましょう。ガラス片などで足にけがをしないように、常時スリッパを使用するのも防災対策と言えます。
冊子で詳しく解説
とよた防災啓発推進協議会が発行した冊子では、家具固定の仕方を3段階のレベルに分けて、分かりやすく解説しています。
02 避難生活を想定し、「備蓄」をする
様々なものが使えない・調達できない状況の中、しばらくは必要最低限の生活が強いられます。
避難所に行く場合には「持ち出し袋」の備えが、自宅で過ごす在宅避難の場合には「自宅の備蓄」が必要です。
【持ち出し袋】
避難所の備蓄品に頼らずとも最低3日分は生活できるよう、非常食やペットボトル水、現金、着替え、ヘルメット、防犯ブザーなどをいつでも持ち出せるようにしておきましょう。常備薬やおむつなど家庭環境に応じて必要な物も。
【自宅の備蓄】
水道、電気、ガスなどが使えない生活を想定して備蓄をします。非常食、飲料水(目安:一人1日3リットル×3日以上)、電源・バッテリー、ライト、凝固剤等のトイレ用品などは必需品と言えます。試しにキャンプ感覚で、在宅避難生活を体験してみるのも良い防災訓練になります。
災害派遣職員が語る“被災地で見たもの”
地震や豪雨の災害が続き、被害が深刻な能登半島。年始の地震後に、支援のため豊田市から派遣された職員が、現地で見て感じたこととは。
遅れる支援物資の到着。あてにしない、備蓄の必要性
物資搬送の際、能登半島を北上するにつれ、段々と悲惨な風景が車窓から見えてきました。道路上の大きな落石や、道路を覆う大量の土砂、大きな割れ目…。南海トラフ地震が発生した場合、豊田市でも同様の状況が予想され、地域や住宅の孤立化が危惧されます。また、被害が広域にわたる場合、支援物資の到着が遅くなることが想定されます。実際に私が派遣で搬送した際、輪島市まで行くのに通常の倍以上の時間がかかりました。落石や地割れで通行できない道を迂回しながら進んだためです。支援物資はすぐには届かないという前提で備蓄品の準備などを進める必要があると感じました。また、断水により使用できず、処理しきれていないトイレが目につきました。豊田市では、指定避難所の災害用便槽の整備やトイレカーの導入などを進めていますが、各家庭でも「携帯トイレ」などの備蓄をしていただくのが効果的でしょう。
(防災対策課 北村 厚さん 1~2月にかけて、被災地で支援物資の搬送や行政業務に従事)
もしも、南海トラフ地震臨時情報が出されたら
気象庁の地震評価検討会委員を務める愛知工業大学の横田先生に、南海トラフ地震臨時情報が出された時の心構えや行動のポイントなどについて、お話を伺いました。
臨時情報は「予知」に非ず。大事なのは、やはり日頃の備え
地震は一度で終わるとは限りません。その時間差は数時間かもしれないし数年かもしれません。南海トラフ地震への影響が考えられる地震やゆっくりすべりが発生すると、その後30分のうちに臨時情報(調査中)が出されます。皆さんは関連情報をすぐ入手できるようにしてください。発生から最短で2時間経過後、我々専門家の調査により防災対応をとる必要があると評価された場合には、巨大地震「警戒」か「注意」の臨時情報が出されます。両者の違いは発生した地震の大きさです。「警戒」は、すでに南海トラフ地震相当の地震が想定領域のどこかで発生している状況でしょう。しかしどちらも、皆さんは日頃からの備えの再確認をし、巨大地震に備えるという点で変わりありません。よく勘違いされがちですが、臨時情報は「予知」ではありません。あくまで発生の可能性がいくらか高まっているということ。だからこそ、臨時情報が出てから備えを始めるのでなく、基本的な備えは事前にできていることが重要です。南海トラフ地震がいつ起こってもおかしくない今、必要な備えを改めて確認し、しっかりと準備をしておきましょう。
(愛知工業大学地域防災研究センター 横田 崇 教授)
南海トラフ地震臨時情報とは
静岡県駿河湾から日向灘沖までの南海トラフ沿いで発生する南海トラフ地震。南海トラフ地震臨時情報とは、気象庁がその発生の可能性が高まっていることを知らせ、注意を呼びかける情報です。「調査中」「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」の4種類があり、発生した事象に応じて発表されます。
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