広報とよた2022年7月号 特集1 立ち直りを支える地域のちから

ページ番号1049973  更新日 2022年7月1日 印刷

テレビや新聞では、毎日のように犯罪に関するニュースが報道されています。犯罪のない明るい社会にするためには、どのようなことが必要でしょうか。罪を犯した人が、自らの罪を償うことはもちろん必要なこと。一方で、地域社会が、立ち直ろうとする人の更生や社会復帰を支援することもまた、大切なことです。本市にも、罪を犯した人が再び同じ道に走らないよう、立ち直りを支えるために日々奔走している人たちがいます。立ち直ろうとする人が抱える生きづらさや、彼らを支える地域の人たちの存在。それらを知る人が増えるだけで、社会は少し明るくなるかもしれません。この機会に、再犯防止について一緒に考えてみませんか。

社会を明るくする運動

イラスト 幸福の黄色い羽根
シンボルマーク幸福の黄色い羽根

「毎年7月は強調月間です」
すべての人が、犯罪や非行の防止と、罪を犯した人たちの更正について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない地域社会を築こうと、法務省が提唱する全国的な運動。

豊田市の再犯の状況

検挙者(事件の被疑者として特定された者)のうち約半数を再犯者が占めています。国や県の統計も同じような割合であり、豊田市の再犯率は決して低くはありません。また、再犯のうち最も割合の高い窃盗犯は、その約半数が無職の人です。窃盗の要因である生活困窮や社会的孤立に陥らないための支援が必要と考えられます。

「検挙者のうち、約半数が再犯者」53.5%初犯者、46.5%再犯者「再犯者のうち、約半数が窃盗犯」1.6%凶悪犯、25.1%粗暴犯、50.6%窃盗犯、6.5%知能犯、16.2%その他「窃盗犯の約半数が無職(犯行時)」50.4%有職、49.6%無職
(備考)令和2年法務省提供データを基に豊田市が作成

社会復帰までの流れ

刑事司法手続きの流れにおいて、社会復帰への過程は人それぞれ。社会復帰の前段にある保護観察では、社会の中で更正するよう、保護観察官や保護司により指導・支援が行われます。

社会復帰までの流れ チャート図

社会復帰後に抱える「生きづらさ」

立ち直りを決意して社会復帰するものの、彼らが置かれる状況は厳しいもの。社会からの厳しい目や、本人が置かれる境遇などにより「働く場所・住まいがない」「相談できる人がいない」など、様々な生きづらさを抱えます。それにより社会から孤立し、再犯をしてしまうことは少なくありません。

立ち直りを支える市の取組

様々な生きづらさを抱える人が、必要な支援を適切に受けられるよう、3月に策定した「豊田市再犯防止推進計画」のもと、次の3つを柱として、取組を進めています。

3つの柱

(1)(対象者を)つなぎ・見守る…対象者の円滑な社会復帰の推進(必要とされる支援内容の調査・調整など)
(2)(協力者を)支える…民間協力者への活動支援(活動費の補助や、活動場所の調整など)
(3)(再犯防止を)理解する…市民への広報や出前講座など、再犯防止の周知・啓発

立ち直りを支える地域の人たち

信じてくれる人がいること、必要とされる場所があることは、立ち直りへの大きな支えとなります。
市は、立ち直りを支える地域のボランティア「保護司会」「更正保護女性会」「BBS会」「協力雇用主会」の活動を支援しています。各会の皆さんに、活動内容や活動への思いを伺いました。

01 保護司会

彼らの話をよく聴き、信頼関係を築くことが大切

「環境調整といって、少年院や刑務所などの出所後に帰る先の調査・調整をします。具体的には、本人の家族に連絡をし、きちんと生活できる環境があるかどうか確認をしたり、寮のような施設への入所を調整したりします。また、保護観察として月に2回ほど面談を行い仕事や日常生活の近況を聴きます。保護司を始めて約30年。これまでに100人くらいを担当しました。ほとんど初めのうちは、表情や態度が固く、話すことはいいかげんです。約束した面談に来ないこともあります。それでも真面目に、親身になって接し続けていくと、表情が変わってきて、態度も落ち着いてきます。彼らが話すことを否定せず、まずはよく聴いてあげることが大切だと思っています。それを積み重ねて初めて、信頼関係を築くことができます。もちろん毎回ではありませんが。保護司が関わることができるのは、あくまで保護観察中の間だけ。それでも、信頼できる大人が存在するということが、彼らのその後に、少しでも良い影響を及ぼすのではないかと思っています。」

会長 三浦 治(みうら おさむ)さん
【保護司】保護観察官と協働して保護観察に当たるほか、社会復帰した時に、社会生活を円滑に営めるよう、釈放後に帰る先の住居や就業先などの環境調整や相談を行う民間のボランティア

02 更正保護女性会

人のあたたかさを感じてほしい

「母が長い間この会で活動していました。母を看取ったあと、知り合いから誘われたのが、私が入会したきっかけです。それからもう20年以上たちます。会の活動では、保護司や施設からの依頼に応じて保護観察中の面談のお手伝いをしたり、少年院などの施設に物資を提供したりしています。面談のお手伝いでは、雰囲気が和らぐように場をセッティングするのが私たちの役割。そのために茶菓子や花を用意するのですが、店に売っている花ではなく、自然に咲いているような身近な花をあえて選ぶようにしています。その方が、少しでもリラックスできると思うから。また、少年院などの施設では、カレーを一緒に作ったり、桜の季節に外で茶をたてたり、クリスマスにケーキを用意したり、そんな活動もしています。普通の人が普通に感じられる、人のあたたかさを感じてもらいたくて活動をしています。」
(備考)現在は感染症対策のため、施設に訪問して行う活動は中止しています

会長 水野 照代(みずの てるよ)さん
【更生保護女性会】女性の立場から地域の犯罪予防活動や子どもの健全育成のための活動、子育て支援活動などを行うボランティア団体

03 BBS会

困難を抱える少年・少女に、新たな発見の場を

「BBS会のメンバーは、学生をはじめ比較的若い人たちです。自分たちが面白そうだと思うことを企画して、少年院などの施設にチラシを配り少年・少女に参加してもらう活動をしています。参加してくれるのは毎回1人か2人。直前でキャンセルされることは少なくありません。何か月も前から準備しているだけにショックではありますが、仕方がないことだと割り切っています。最近、ある男の子が連続して参加してくれたことがありました。最初は固い表情でしたが、次第に打ち解けてくれて、最後には「1人でなく、みんなでやるから楽しかった」という感想を聞かせてくれました。とても嬉しかったです。私たちの活動では、たわいもない会話をするだけです。特に深い悩みを聴くわけではありません。でも、一緒に楽しんでくれたり、「ありがとう、また来てね」と言ってくれたりする大人がいることを知るだけでも、何かプラスになるんじゃないかなと思っています。」

会長 山崎 敏弘(やまざき としひろ)さん
【BBS会】様々な問題を抱える少年に、兄や姉のような身近な立場で接することで、少年の成長を支援する青年ボランティア団体

04 協力雇用主会

どんなことでも良いから、働く目標や目的を持ってほしい

「協力雇用主会に入るずっと前から、前科のあるような人を雇い入れてきました。どうしてか分からないけど、昔から、様々な境遇の子の親や警察官、保護司から相談を受けることが多くありました。これまでに雇い入れたのは50人くらい。すぐ辞めた人もいれば、定年まで勤めた人、転職した人などさまざまです。相談を受けた人の雇用は基本的には断りません。でも、彼らにはかなり厳しいことを言いますし、しょっちゅう叱ります。大人を信用していないから、最初は嘘ばかりつきますが、辛抱強く接していくと、本音を言うようになります。それまでには1年間かかることも。自分が何のためにそこにいて、働くのか。働く目標や目的が見つかった人は立ち直れます。車を買いたいとか、小さなことで構いません。懸命に働けば、悪いことをしないのです。私たちは、そうした場所をつくってあげるということだけです。」

会長 岡本 勝(おかもと まさる)さん
【協力雇用主】自立・社会復帰に協力することを目的として、犯罪や非行をした人たちを雇用し、立ち直りを支援する事業主

問合せ

社会を明るくする運動ほか/次世代育成課(電話番号:0565-34-6630、ファクス番号:0565-34-6938、Eメール:jisedaiikusei@city.toyota.aichi.jp)
豊田市再犯防止推進計画/地域包括ケア企画課(電話番号:0565-34-6787、ファクス番号:0565-34-6793、Eメール:hokatsu-care@city.toyota.aichi.jp)

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