広報とよた2022年9月号 特集 ラムサール条約登録10周年「東海丘陵湧水湿地群に生きるもの」

ページ番号1050861  更新日 2024年4月1日 印刷

県内最大の面積を誇る豊田市。市域の多くを占める緑豊かな自然には、多様な生き物が生息しています。特に、ラムサール条約湿地である「東海丘陵湧水湿地群」には、ほとんどここでしか見られない希少な動植物が生きています。彼らにとっては最後の楽園とも言える東海丘陵湧水湿地群。今号の特集では、東海丘陵湧水湿地群やそこに生息する生き物、湿地の環境を保全する人たちについてご紹介します。

ハッチョウトンボ
【ハッチョウトンボ】
日本一小さなトンボとして知られ、その大きさはわずか2センチメートルほど。夏から秋にかけて、湿地を飛び交う赤い姿が見られます。

東海丘陵湧水湿地群とは

豊田市の丘陵地にある3つの湿地

なだらかな起伏や小山(丘)が続く地形を丘陵地といいます。東海地方の丘陵地には、谷間や斜面にできる小規模な湧水湿地が多数あります。これらの湿地の特徴は、栄養が乏しいこと、面積が狭いこと、そして地域固有の植物や昆虫が多く見られることです。
市街地から東へ約4キロメートル、低い山に囲まれた谷あいには「矢並湿地」が、さらに周辺には「上高湿地」や「恩真寺湿地」があります。これら3つの湿地を合わせて「東海丘陵湧水湿地群」と呼びます。

低い山に囲まれた谷あいにある矢並湿地
矢並湿地
矢並湿地の周辺にある上高湿地
上高湿地
矢並湿地の周辺にある恩真寺湿地
恩真寺湿地

3つの湿地の地図

ラムサール条約への登録

昭和46年(1971)の国際会議で採択されたラムサール条約。正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。日本を含むラムサール条約の締約国は、自国の湿地を、条約で定められた国際的な基準に従って「ラムサール条約湿地」に指定(登録簿に掲載)することができます。現在(8月3日時点)、世界172か国の2,455か所の湿地がラムサール条約湿地に登録されています。そのうち日本の湿地は53か所です。
東海丘陵湧水湿地群は、平成24年(2012)にラムサール条約湿地に登録されました。これをきっかけに、市や地域団体などが協働し、将来に向けた生物多様性の保全や周知・啓発が行われています。

ラムサール条約事務局長と市長
ラムサール条約事務局長から東海
丘陵湧水湿地群の登録認定証を受
け取る市長(平成24年7月7日)

湿地群の希少性

3つの湿地に生息する、地域固有の多様な生き物

東海地方の丘陵地の湿地には、「東海丘陵要素植物」と呼ばれる、地域固有の植物が生息しています。中でも、矢並湿地のミカワシオガマの群落規模は国内最大級で、秋にはシラタマホシクサとともに見事な景観をつくります。東海丘陵要素植物は、栄養が豊かな場所ではほかの植物との競争に負けてしまうため、栄養が乏しい場所にのみ生息します。東海丘陵湧水湿地群には、植物の他にもホトケドジョウやヒメタイコウチなどの希少な動物や、多くのトンボ類も生息しています。かつては広く見られた湿地の動植物ですが、開発などにより生息できる場所は少なくなってきています。

ミカワシオガマの群落
ミカワシオガマ
ミカワシオガマとシラタマホシクサ
ミカワシオガマと
シラタマホシクサの群生
ホトケドジョウなどの希少な動物
ホトケドジョウ

湿地を彩る植物たち

東海丘陵湧水湿地群で見られる植物

東海丘陵湧水湿地群で確認されている植物は、なんと400種類以上。
どの植物も、湿地に映える鮮やかな色をもっています。その生き生きとした姿をご覧ください。

季節ごとに様々な植物を楽しむことができる湿地。普段は公開していませんが、秋の矢並湿地一般公開や、季節ごとに行われる観察会では、そのときどきの植物を身近に観察することができます。多種多様な植物を、是非ご自身の目で確かめに来てください。

地域で守る3つの保全団体

3つの湿地を地域で守る保全団体の皆さんに、どのような活動をしているのか、お話を伺いました。

  • 矢並湿地保存会 天野 正和さん
  • 上高湿地を守る会 鈴木 敏朗さん、田中 新二さん
  • 山中町自治区(恩真寺湿地) 那須 一郎さん

湿地を守るために、どんな活動をしていますか?

矢並湿地保存会(天野さん)
地域の住民を中心に、80~90人の会員で活動しています。主には年に数回の環境整備と毎月の見回り活動。夏には、湿地周りの草刈りなどをし、冬には湿地の枯れた草木を取り除きます。これが結構な重労働。他の会も、活動については同じような感じでは。

山中町自治区(那須さん)
同じですね。こちらは自治区で活動をしています。

上高湿地を守る会(鈴木さん)
私たちは、矢並湿地さんと同じく地域の住民と有志、合計30人弱で活動しています。中には中学生も2人います。小学校の授業で保全活動に関わって、卒業しても続けたいって言ってね。あと、市外から来てくれる人もいます。

山中町自治区(那須さん)
上高湿地さんは、けっこう頻繁に活動されていますよね。

上高湿地を守る会(鈴木さん)
毎月欠かさず活動しています。特に冬場は月に2回。役員からでなく、一般会員から出た「月に2回にしたい」という意見が発端です。

矢並湿地保存会(天野さん)
年に数回の活動では、草はすぐ生えるし、物足りなさを感じる。上高湿地さんみたいに頻繁にやれると良いなとは思っています。

上高湿地を守る会(田中さん)
無理して多くの人を集めてやらなくても、来た人だけでやれば良いんだと思いますよ。
私たちは、湿地を守るということ以上に、この活動の場が、地域の人と人が交流する場になることを意識しています。顔を合わせて、みんなでわいわいやるのが楽しいんです。

湿地の公開について

矢並湿地保存会(天野さん)
湿地には多様な動植物が生息しています。それぞれ見頃の時期は異なり、期間はごく短い。保全団体である私たちだからこそ遭遇する、その美しい光景を見るたびに、もっと多くの人に見てもらえたらと歯がゆさも感じます。だからこそ、年に1回の一般公開には、是非多くの人に来てもらいたいと思っています。

ほかにも、湿地の保全に取り組む人たちがいます。

地元の小学生たち

  • 湿地学習モデル校に指定された小学校(上鷹見・矢並・則定・根川小学校)が、年間を通して環境学習や保全活動を行い、生物の多様性などについて理解を深めています。また矢並湿地の一般公開では、小学生がガイドを務めて、日頃の学習の成果を披露しています。

地元企業の人たち

  • 矢並湿地では、地元企業3社が湿地の保全活動に協力しています。これは、環境活動を行っている団体と、社会貢献活動として環境活動に取り組みたい企業が結びついて、実現したものです。

湿地が見られる!イベント情報

  • ラムサール条約登録10周年イベント
  • 矢並湿地一般公開

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