広報とよた2021年1月号 新春特集 ~豊田が誇る芸術作品~ 豊田小原和紙工芸の魅力

ページ番号1041229  更新日 2021年1月1日 印刷

日本古来の紙である和紙。洋紙と比べて繊維が長いため丈夫で保存性が高いという特徴があります。また、素材の持つ美しさも魅力の一つです。この和紙を芸術作品の域まで高めたものが豊田小原和紙工芸です。令和3年9月に開催される「豊田国際紙フォーラム」では、豊田小原和紙工芸の魅力を世界に向けて発信します。今号では、豊田小原和紙工芸について詳しく紹介。是非、豊田が誇る和紙工芸の魅力に触れてみてください。

新春対談 ~豊田小原和紙工芸作家 山内一生氏に聞く~ 「豊田小原和紙工芸」との出会い

豊田小原和紙工芸は、かつて障子紙や傘紙などに使われていた三河森下紙をルーツとしています。もともと日用品として使われていた和紙を、今日の芸術作品の域にまで高めたのが、碧海郡棚尾村(現・碧南市)出身の美術工芸家・藤井達吉です。
戦後まもなく、小原村(現・豊田市)で藤井と出会い、70年以上にわたり和紙工芸に取り組んできた山内一生氏に、恩師・藤井との出会いや豊田小原和紙工芸への思いなどを聞きました。

山内一生工房にて 豊田小原和紙工芸作家 山内 一生さんと豊田市長 太田 稔彦
豊田小原和紙工芸作家 山内 一生氏と豊田市長 太田 稔彦

山内一生工房にて撮影。屏風は「紅白梅」(こうはくばい)(山内一生作、平成20年)。実際の対談はマスクを着用して行いました。

山内 一生氏

山内 一生 PROFILE

  • 昭和4年:小原村(現豊田市)で生まれる
  • 昭和22年:美術工芸家藤井達吉に師事し、豊田小原和紙工芸作家として活動を始める
  • 昭和28年:国内最大の総合美術展である日展で初入選
  • 昭和57年:愛知県芸術文化選奨を受賞
  • 昭和63年:紺綬褒章を受章
  • 平成9年:日展で内閣総理大臣賞を受賞
  • 平成19年:旭日小綬章を受章
  • 平成30年:豊田市名誉市民となる

世界的な紙の祭典が豊田市にやってくる

市長 昨年、新型コロナウイルス感染症で延期となった豊田国際紙フォーラムが、今年開催される予定です。
山内 小原の和紙工芸の制作工程については、ご存じない方が多いと思います。和紙工芸というのは日本の芸術界でも珍しいものなので、世界中の人々にその魅力を知ってもらいたいです。
市長 世界中を見渡しても、紙を芸術作品にまで高めた地域はほとんどないと聞いています。そういった意味でも、豊田小原和紙が持つ価値を世界に向けて発信していくことは大切なことだと思います。
山内 そうですね。紙を使った作品は世界中に数多くありますが、紙そのものを芸術作品にしたのはここ小原だけだと思います。和紙の丈夫さは世界中が認めていますが、それを芸術作品の域にまで高めたのが、私の恩師である藤井達吉先生です。先生は本当に立派だと思います。

恩師・藤井達吉との出会い

市長 藤井先生が小原村に来たのはなぜですか。
山内 もともと藤井先生は碧南市の出身で、戦中に疎開のため、小原村にやってきました。先生が自身の作品に使う和紙を小原村の紙漉き職人に注文していたことが縁でした。先生は、郷里の紙を作品に使いたいとの思いがあったようですね。また、小原村の人たちの純朴さも気に入り、村に疎開されたようです。
市長 どのように藤井先生に出会ったのですか。
山内 私の家は農家だったので、紙漉きをやったことも見たこともありませんでした。そんな中、当時の村長の勧めで私を含めた村の若者たちが先生に会いに行くことになりました。それが先生との出会いです。
市長 藤井先生はどんな人でしたか。
山内 怖い人でした。よく叱られた記憶があります。ただ、先生が持つ何とも言えない魅力に若い私は引き込まれました。先生には先見の明がありました。「これから機械産業が発達する。そうすれば逆に手工業が見直されるようになるだろう」と70年以上前に既に現代を予見したことを言っていました。

物事の本質を捉えた作品づくり

豊田市長

市長 藤井先生からは何を学びましたか。
山内 先生はいつも「自然に学べ」と言っていました。毎日道端に生える草花などをスケッチしては先生に見てもらっていました。先生は、自然の習性を分かったうえで省略して描くことは認めましたが、それを理解もせずに描いたものは一切認めませんでした。
市長 基礎を押さえ、本質を捉えることが大切ということですね。私たちが仕事や勉強などに取り組む際にも通じる考え方だと思います。
山内 そうですね。先生の教えは、血となり肉となって、私が作品づくりに取り組む際の大切な考え方になっています。

人との出会いを大切にする

市長 他にも何か教わったことはありますか。
山内 藤井先生はいつも言っていました。「人脈は財産だ。とにかくお前の財産は良い友人や先輩たちだ。そうした出会いをたくさん作れ。そうすればお前もきっと浮かばれてくる」と。
市長 山内さんの幅広い人脈は、人との出会いを大切にするところから生まれているんですね。そんな山内さんにとって、藤井先生との出会いは特別でしたか。
山内 藤井先生と出会わなければ今の私はありませんでした。人との出会いというのは本当に素敵なことですよ。

作品を見る山内一生氏と太田市長
写真左「日月文」(にちげつぶん)(令和元年)、写真右「芳潤」(ほうじゅん)(平成21年) いずれも山内一生作品

困難な時代にあっても

市長 先ほど山内さんは人との出会いの大切さについて話されました。今、コロナ禍において、なかなか人と会うことが難しくなっています。
山内 このような状態がずっと続くことは良くないことだと思いますが、大切なのは本人の心持ちです。例えば、人と出会えなくても、本を読むなど工夫次第で新たな出会いが広がると思います。

未来を担う子どもたちへ

市長 山内さんは、絵を描くのが好きで、藤井先生にも出会われ、この道に進まれました。そんな山内さんが、未来を担う子どもたちに伝えたいことはありますか。
山内 自分の好きなことを見つけることが重要だと思います。そのためには、やはり「出会い」が大切でしょう。藤井先生は小原村の若者たちに向けて歌を詠みました。「小原ぬも 春は来にけり 起きよおきよ むしさへ とりさへ 春知るものを」(小原の者たちよ、春はくるぞ。目覚めよ。虫でも鳥でも春が来ることを知っている。自然の中で生きていて、皆自然の素晴らしさを知っているのだから)。これは、小原村の若者たちに向けた先生からのエールです。困難な時代ではありますが、未来を担う子どもたちには、是非たくさんの「出会い」を経験してもらいたいです。

作品制作に取り組む山内一生氏
作品制作に取り組む山内一生氏。90歳を過ぎた現在も、
豊田小原和紙工芸への情熱は衰えを知らない。

山内一生工房
〒470-0541、西萩平町竹ノ下37、電話番号:0565-65-2112、ファクス番号:0565-65-2075、Eメール:issei@hm10.aitai.ne.jp
工房見学は事前連絡必要。見学可能時間/午前10時~午後5時(土曜日~月曜日・祝日は休み)

豊田小原和紙の歴史

副業としての紙漉き

藤井達吉氏
藤井達吉
(明治14年(1881年)~昭和39年(1964年))
写真は昭和32年に撮影したもの

豊田小原和紙工芸は、主に和紙原料のコウゾを染色し、それを絵具代わりに絵模様を漉きこんでいく美術工芸作品です。
小原村の紙漉きの起源は不明ですが、室町時代に柏庭という僧侶によって紙漉きが伝えられ、農閑期の副業として広まったことが始まりと言われています。江戸時代中期頃には地域内の各地で紙漉きが営まれ、明治9年には27軒が紙漉きを営んでいたことが記録からわかっています。当時は、番傘や障子などに用いる三河森下紙という紙を生産しており、昭和初期までは村の大きな産業のひとつになっていました。しかし、その後は、生活様式の変化や機械漉きが急速に発達したことなどを受け、全国的に手漉き和紙の需要は減少していきました。

豊田小原和紙の転機

そのような中、三河森下紙の質の良さに着目した人物が、碧南市出身の美術工芸家・藤井達吉です。昭和7年、藤井は図案集に使うため、約1万5,200枚もの三河森下紙を小原村の紙漉き職人に注文しました。衰退の道をたどり始めていた小原村の紙漉きは、藤井との出会いにより転機を迎えます。
藤井が小原村を訪問した際、滞在先の家の襖には、野草を漉きこんだ和紙が使われていました。それを目にした藤井は、和紙で工芸作品ができるのではないかと考え、付加価値の高い和紙を作るよう勧めました。これを受け、小原村の紙漉き職人たちは、染色技術などを習得し、美術工芸品としての和紙の制作を開始しました。

素材から芸術作品へ

美術工芸和紙としての道を歩み始めた小原村の紙漉きは、昭和20年に藤井が疎開してきたことで、その方向性が決定づけられました。5年間を小原村で過ごした藤井は、村の若者に芸術の基礎から和紙工芸の何たるかまでを教えました。
現・北大野町鳥屋平の山中に紙漉き共同工房、陶芸窯、画室など多くの建物からなるアトリエを建設した藤井のもとには、彼を慕う若者が多く集まりました。昭和22年には、指導を受けた村の職人たちが合作した作品が、日展に初入選。これをきっかけに「小原工芸会」が発足し、一層の普及が図られるようになりました。藤井の言葉を信じた若者たちが、豊田小原和紙工芸の基礎を築き上げていったのです。
藤井の尽力により、単なる素材としての和紙ではなく、紙そのものが鑑賞に値する芸術作品へと生まれ変わった豊田小原和紙工芸。今日では、藤井の志を継ぐ作家たちによって、額絵、襖、屏風などのほか、現代の生活にも溶け込む壁紙やランプシェードなどが制作されています。

共働工房
共働工房での作品制作の様子
(昭和30年頃)
和紙のランプシェード
豊田小原和紙を使ったランプシェード

小原和紙のふるさとで和紙に触れてみよう

小原和紙のふるさとは、豊田小原和紙の普及発展を目的に設置された参加体験型の博物館です。小原の自然に囲まれた施設には、紙漉き体験実習を行う「和紙工芸体験館」、豊田小原和紙工芸や藤井達吉の美術工芸作品、全国の和紙資料を紹介する「小原和紙美術館」などがあります。

小原和紙のふるさと
〒470-0562、永太郎町洞216-1
電話番号:0565-65-2151、ファクス番号:0565-66-1001
開館時間/午前9時~午後4時30分
休館日/祝日を除く月曜日、年末年始

和紙工芸体験館 内観
和紙工芸体験館
小原和紙美術館 内観01
小原和紙美術館

小原和紙美術館 内観02

和紙漉き体験に挑戦!

広報とよた学生レポーターの小笠原悠さんと加納嘉乃さん

広報とよた学生レポーターの小笠原悠さんと加納嘉乃さんが和紙工芸体験館で紙漉きに挑戦。2人とも初めての紙漉き体験です。どんな作品ができるのでしょうか。


色付きの原料を流し込む

葉漉き体験

白色の和紙の原料の上に、色付きの原料を思い思いに流し込みます。


もみじや桜の形をした紙を配置

もみじや桜の形をした紙を配置し、取れないように上から原料を流します。


色が異なる和紙の原料を枠に流し込む

字漉き体験

色が異なる和紙の原料を順番に枠に流し込み、全体に広げます。


乾く前に指で文字や絵を描く

乾く前に指で文字や絵を描きます。今年の干支「丑」の文字を書きました。


完成した作品を笑顔で持つ学生レポーター

完成!

作品は乾燥も含めて1時間ほどで完成。「思ったよりも簡単にできてとても楽しかった」と2人とも大満足の様子。皆さんも是非体験してみてはいかがでしょうか。

-プチ情報-こんなところにも和紙が使われています

市立小・中学校、特別支援学校の卒業証書には、市内で作られた手漉きの和紙が使われています。この取組は、郷土に愛着を持ってもらうために平成20年から続いており、毎年2月頃に完成した卒業証書への名入れが行われます。

豊田国際紙フォーラム PAPER TOYOTA

Create the bright future through paper 紙を通して創造するミライ

9月から市内の各所で、世界中のペーパーアートや国内外から集めた紙の展示など、紙にまつわる展覧会が開催されます。紙という、人類が自然から作り出した革新的な発明品を通して、ものづくりへのアプローチを今一度問い直そうというのが、豊田国際紙フォーラムのテーマです。シンポジウムやワークショップ、マーケットなど、子どもから大人まで楽しめるイベントが企画されています。

会期

9月7日(火曜日)~12月5日(日曜日)

場所・内容

主な展覧会

小原和紙のふるさと

10月2日(土曜日)~12月5日(日曜日)

  • 豊田小原和紙工芸会展
  • 藤井達吉展
  • 小原ゆかりの作家セレクト展など
民芸館

9月7日(火曜日)~10月17日(日曜日)

  • 日本の紙と世界の紙展
喜楽亭

9月7日(火曜日)~10月17日(日曜日)
(備考)民芸館・喜楽亭・市民ギャラリーの3会場にて開催

  • 世界のペーパーアート展「APPROACH」

主なイベント

シンポジウム
  • 10月10日(日曜日)-参合館コンサートホール-
    午後1時~5時15分
    紙の専門家などによる講演会や、ものづくりの未来についての意見交換
ワークショップ
  • 10月10日(日曜日)-参合館1階アトリウム-
    午前9時30分~正午
    伝統的な紙漉き用具作りや、和紙を使った文化財修復方法の実演など
ペーパー夜市
  • 10月10日(日曜日)-とよしば(予定)-
    午後6時から
    国内外の紙やオリジナリティ溢れる紙作品の販売

問合せ

豊田国際紙フォーラム実行委員会(小原支所内)
電話番号:0565-65-2001(代表) ファクス番号:0565-65-3695 Eメール:info@papertoyota2020.jp 

新春プレゼントクイズ!

豊田小原和紙を使った御朱印帳

市内在住の正解者の中から抽選で5人に、豊田小原和紙を使った御朱印帳をプレゼントします(当選者は発送をもって発表。御朱印帳の色やデザインは選べません)。

  • 問題
    美術工芸家・藤井達吉によって芸術作品の域にまで高められた市内の美術工芸品は「豊田○○和紙」です。○○に入る2文字は何でしょうか。
  • 応募方法
    1月29日(金曜日)までに、(1)問題の答え (2)〒住所 (3)氏名(ふりがな)(4)広報とよた1月号の感想を、ハガキ、ファクスかEメールで市政発信課(〒471-8501、西町3-60、ファクス番号:0565-34-1528、Eメール:shisei@city.toyota.aichi.jp
  • 問合せ
    市政発信課(電話番号:0565-34-6604)

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