PCBの基礎知識
- 最終更新日:
- 2009年10月13日
PCB(ポリ塩化ビフェニル)の物性や環境における問題、処理技術など、PCBに関する基礎的な情報のご説明です。
PCBとは何か?
PCBとは、ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl)の略称で、炭素、水素、塩素からなる、工業的に合成された油状(白色の結晶状の物もあります)の物質です。化学的に安定などの性質を有しているため、電気機器の絶縁油や熱媒体などに使用されてきました。
(中の透明な液体)
構造
PCBは次のような構造をしており、塩素の数や位置によって理論的に209種類の異性体が存在します。
構造例
主な物性
| 分子式 | C12HnCl(10-n) (0≦n≦9) |
| 分子量 | 188.5~498.5 |
| 比重 (注釈1) | 1.44(30℃) |
| 融点 (注釈2) | 233~253、340~375℃ |
| 沸点 (注釈2) | 340~648℃ |
| 蒸気圧 (注釈1) | 4.94×10-4mmHg(25℃) |
| 水溶解度 (注釈1) | 0.7mg/L(25℃) |
| 分配係数(logPow)(注釈1) | 7.1 |
(注釈1)環境省PRTR法指定化学物質データ検索より
(注釈2)環境省POPs対策検討会資料より
特性
- 化学的に安定
- 熱により分解されにくい
- 酸化されにくい
- 酸、アルカリに安定
- 金属をほとんど腐食しない
- 水に極めて溶けにくく、油に溶けやすい
- 電気を通しにくい
- 沸点が高い
- 不燃性
何に使われていたのか?
電気機器の絶縁油、加熱や冷却用熱媒体、感圧複写紙 等
代表的なPCB使用電気機器
トランス
コンデンサ
安定器
環境における問題
- 環境中で分解されにくい…残留性が高い
- 脂溶性で生物濃縮性が高い…生物蓄積、濃縮性が高い
- 半揮発性で大気経由の移動がある…揮散、移動性がある
人体への毒性
1968年(昭和43年)、西日本各地で発生したカネミ油症は米ぬか油(ライスオイル)中に、脱臭工程の熱媒体として用いられたPCB等が混入した事が原因で起きた食中毒事件です。PCBが口から体内に入ってしまった世界的にも稀な事例です。体の吹出物、爪の変形や色素沈着、関節のはれや手足のしびれなどの症状を訴える人が続出しました。(最近の研究では、熱媒体としてPCBが利用されていたため、PCBの一部が熱等により酸化し、より毒性の強いポリ塩化ジベンゾフランに変化したため被害が大きくなったと考えられています。)
一般にPCBの中毒症状としては、爪や口腔粘膜の色素沈着、塩素座瘡(塩素ニキビ)、爪の変形、関節のはれ、肝機能障害などがあります。
PCB自体の急性毒性は衣類の防虫剤程度と言われ、直接飲んだり触れたりしない限り、近くにあるだけで直ちに影響があるというものではありません。
しかし、PCBはひとたび環境中に放出されると、その物理的、化学的性質から環境中で分解されにくく、食物連鎖で長い期間をかけて人体に濃縮されることによって、発ガン等の恐れがあると懸念されています。特に、過去PCBを全く使用していなかった極地の人から高い濃度でPCBが検出されています。
現在、日本においてPCB廃棄物は、長いもので30年もの間保管が義務付けられていますが、容器の腐食や、企業の倒産等による紛失によってPCBが環境中に漏れ出す危険が指摘されております。実際、厚生省が平成10年度に実施した調査では、約11,000台の紛失、不明が明らかとなっています。
このような状況から、国際的にもPCBの処理が急がれています。
PCBに関する経緯(年表)
| 年 | 出来事等 |
|---|---|
| 1881年(明治14年) | ドイツのシュミット、シュルツ氏がPCBの合成に成功 |
| 1929年(昭和4年) | 米国スワン社(後にモンサント社に合併)工業生産開始 |
| 1954年(昭和29年) | 国内にて製造開始(鐘淵化学工業。三菱モンサント(現、三菱化学)は、1969年製造開始) |
| 1968年(昭和43年) | カネミ油症事件、ブロイラー中毒等の発生、PCBの毒性が社会問題化 |
| 1972年(昭和47年) | 行政指導により生産・製造中止、回収・自己保管の指示 |
| 1973年(昭和48年) | 財団法人電機ピーシービー処理協会(現財団法人電機絶縁物処理協会)が設立 |
| 化審法制定、翌年PCB製造・輸入・使用の原則禁止 | |
| 1976年(昭和51年) | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)改正(PCB関係廃棄物の処理基準設定) …高温焼却による処理を認める |
| 1984年(昭和59年) | 通商産業省「PCB使用電気機器の取扱について」を通達(保有状況の変化があった場合の報告先を明確化) |
| 1985年(昭和60年) | 環境庁が鐘淵化学工業株式会社高砂事業所の熱分解処理装置で液状廃PCBを試験焼却 |
| 1987年~1989年 (昭和62年~平成元年) |
鐘淵化学工業株式会社高砂工業所において、液状廃PCB(5,500t)の高温熱分解処理を実施 |
| 1992年(平成4年) | 廃棄物処理法改正施行(廃PCB等及びPCB汚染物を特別管理産業廃棄物に、PCBを含む家電製品を特別管理一般廃棄物に指定) |
| 1993年(平成5年) | 厚生省がPCB使用機器保管状況調査結果を公表…PCB使用機器(高圧トランス、高圧コンデンサ)の台数ベースで7%が不明・紛失 |
| 1996年(平成8年) | PCBに関する国際セミナーが東京で開催 |
| 1997年(平成9年) | 廃棄物処理法施行令改正(PCB処理物を特別管理産業廃棄物に指定、処分方法としてPCBを分解する方法を新たに指定) |
| 1998年(平成10年) | 廃棄物処理法の省令等改正(PCB関連廃棄物の処理基準設定)…脱塩素化分解、超臨界水酸化による処理を追加認定 |
| POPs(残留性有機汚染物質(PCB、ダイオキシン類、DDT等))条約の政府間交渉会議が開始 | |
| 1999年(平成11年) | 住友電気工業株式会社PCB自家処理開始 |
| 2000年(平成12年) | 株式会社荏原製作所PCB自家処理開始 日本曹達株式会社PCB自家処理開始 東京電力株式会社PCB処理施設の設置(横浜市、川崎市、千葉市)表明&住民説明会等手続開始 東京都PCB廃棄物適正処理検討委員会開始 大阪市PCB適正処理検討委員会開始(2007年度までに市内PCB完全処理方針の表明) |
| 厚生省がPCB使用機器保管状況調査結果を公表 …平成4年度から10年度の間にPCB使用機器が台数ベースで4.1%紛失 厚生省が総合的なPCB処理体制の確立(立法措置)を表明
|
|
| POPs条約の政府間交渉会議にてPCBを含む12種類のPOPsの全廃・削減を内容とする国際条約の発効に向けた取組みの協議 | |
| 豊田市PCB廃棄物適正処理検討委員会開始 | |
| 2001年(平成13年) | 三菱重工業株式会社PCB自家処理開始 北九州市PCB処理安全性検討委員会開始 国から豊田市に対して広域処理施設の立地要請(4月9日) |
| 「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」、「環境事業団法の一部を改正する法律」等の制定・施行 北九州事業について環境省の認可(11月1日) |
|
| 2002年(平成14年) | 日本POPs条約批准(8月30日) |
| PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づく全国のPCB廃棄物保管量の公表(10月23日 環境省) | |
| 豊田事業について環境省の認可(10月24日) | |
| 東京事業について環境省の認可(11月8日) | |
| 2003年(平成15年) | 北海道事業について環境省の認可(2月19日) |
| 大阪事業について環境省の認可(2月19日) | |
| 環境省が「PCB廃棄物処理基本計画」を策定(4月22日)(環境省報道発表資料へ) | |
| PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づく全国のPCB廃棄物保管量の公表(10月24日 環境省) | |
| 2004年(平成16年) | 環境省が「PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」を策定(3月) |
| 環境事業団によるPCB廃棄物処理事業が日本環境安全事業株式会社に承継(4月) | |
| 廃棄物処理法の省令等改正 …機械化学分解方式、溶融分解方式による処理を追加認定(4月) |
|
| 北九州事業が操業開始(12月18日) | |
| 2005年(平成17年) | PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づく全国のPCB廃棄物保管量の公表(1月21日 環境省) |
| 豊田事業が操業開始(8月29日) | |
| 東京事業が操業開始(11月22日) | |
| 2006年(平成18年) | 大阪事業が操業開始(10月3日) |
| 2008年(平成20年) | 北海道事業が操業開始(5月21日) |
出典:「PCB処理技術ガイドブック」掲載表に加筆
PCBの処理技術
| 分類 | 廃PCB等 | 汚染物 | 処理物 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 紙くず 木くず 繊維くず |
廃プラ 金属くず 陶磁器くず |
廃油 廃酸 廃アルカリ |
紙くず 木くず 繊維くず |
廃プラ 金属くず 陶磁器くず |
その他 | ||
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| 機械化学分解方式 | - |
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| 溶融分解方式 | - |
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○:国の技術認定を受けている方式
-:該当していない方式
- 廃棄物処理法施行令第6条の5第1項第2号ニ~ヘ
- 平成4年7月3日 厚生省告示第194号第6号~12号
| 分類 | 処理技術 |
|---|---|
| アルカリ触媒分解法(BCD法) 化学抽出分解法 金属Na脱塩素化法(MC法) 金属Na脱塩素法(PCB Gone法) 金属Na分散体法(SP法) 金属ナトリウム分散体法(SD法) 金属ナトリウム分散油脱塩素化法(OSD法) 触媒水素化脱塩素化法(Pd/C法) 触媒水素還元法 有機アルカリ金属分解法(t-BuOK法) |
|
| 水熱分解法 超臨界水酸化分解法 |
|
| 気相水素還元法 溶融触媒抽出法(CEP法) |
|
| UV/触媒分解法 紫外線分解・生物処理法 |
|
| 機械化学分解方式 | ラジカルプラネット技法 |
| 溶融分解方式 | ジオメルト法 |
| プラズマ分解法(PLASCON) | |
| 焼却 | |
| MHI化洗法 S-DEC法 溶剤洗浄法 溶剤洗浄法(Decontaksolv法) 溶剤洗浄法(SD Myers法) 溶媒抽出分解法(SED法) |
|
| 真空加熱分離法 真空加熱分離法(VTR法) |
脱塩素化分解方式
PCBとアルカリ剤等を50~320℃、常圧で混合し、化学反応によりPCBの塩素を水素と置換してビフェニル等に分解(米国、カナダ、フランス、日本などで処理を実施)
水熱酸化分解方式
超臨界水(374℃、22MPaの臨界点を超えた超臨界状態の水またはそれに近い状態の水)に酸化剤を反応槽で混合してPCBを吹き込むと、PCBが二酸化炭素、水、塩化ナトリウムに分解
還元熱化学分解方式
水素雰囲気中、常圧下で850℃以上に加熱することでPCBが脱塩素化(還元反応)され、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化ナトリウムに分解
光分解方式
PCBとアルカリ剤等を約50~60℃、常圧で混合し、紫外線を照射することでPCBの塩素が脱離し、1~2塩化ビフェニル等なり、さらに、触媒によりビフェニルまで脱塩素化、又は、PCB分解菌による生物処理により無機化
プラズマ分解方式
3,000℃以上の高温でPCBを原子にまで分解する処理方式。
- 反応生成物:一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、水素、水
焼却
予熱し粘度を下げたPCBを、1,100℃以上の炉中に噴霧して焼却する方法。
- 大量のPCBを効率よく、短時間で分解できる
洗浄
PCBが入っている容器、部材などを溶剤などで洗浄してPCBを分離する方法
分離
真空加熱分離
PCBが入っている容器、部材などを真空状態で加熱し、PCBを蒸発させて分離する。
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環境保全課
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- 大気汚染・騒音・振動・水質汚濁にかかる規制・指導・調査に関すること
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